矯正歯科

出っ歯を治療しないとどんな問題が起こるの?

出っ歯を治療しないとどんな問題が起こるの?

出っ歯をそのままにしておくと、見た目のコンプレックスやドライマウス、奥歯の寿命が縮む、滑舌が悪くなるなどの問題が起こってくる可能性があるため、ご説明します。

出っ歯を放置するとこんな問題が起こる

出っ歯を治療せずに、そのままの状態にしておくと、様々な問題が起こる可能性があります。

  1. 見た目のコンプレックスに繋がる
  2. 口が閉じにくいためドライマウスになり、虫歯や歯周病のリスクが高まる
  3. 重度の出っ歯では奥歯でしか噛めないので奥歯の寿命が短くなる
  4. 滑舌がわるくなったり喋る時に唾が飛びやすくなる

1. 見た目のコンプレックスに繋がる

出っ歯を治療したい方は「見た目」をまず理由としてあげられます。前歯が出ていることはご本人にとってはそれほど気になることであり、コンプレックスになっていることが伺えます。

2. 口が閉じにくいためドライマウスになり、虫歯や歯周病のリスクが高まる

出っ歯の場合、上唇が歯で持ち上がってしまい、お口が閉じにくい状態になります。唇に力を入れないと口が閉じにくくなると、時々口を開けて口呼吸になってしまうことがあります。

口呼吸は様々なトラブルを招くとされており、その一つはドライマウスという口内の乾燥です。口を閉じた状態では唾液が口内に行き渡り、洗浄作用や抗菌作用で歯を守ります。

しかし口内が乾燥して唾液が少なくなると、口腔内に細菌が繁殖しやすくなり、虫歯や歯周病を招きます。

3. 重度の出っ歯では奥歯でしか噛めないので奥歯の寿命が短くなる

重度の出っ歯の場合、前歯でものが噛みにくくなりますので、本来は前歯や小臼歯で噛むべき場合でも奥歯を使うようになります。その結果、奥歯を酷使してしまい、奥歯を傷め、寿命を縮める可能性があります。

4. 滑舌がわるくなったり喋る時に唾が飛びやすくなる

出っ歯の方は滑舌が悪くなる場合があります。特に「ラ行」や「サ行」が発音しづらい場合があります。また、口が閉じにくいため喋った時に唾が飛びやすくなり、これもコンプレックスに繋がります。

どの程度から出っ歯と判断されるの?

出っ歯は不正咬合といわれる悪い歯並びの一つで、上顎前突ともいいます。上の前歯が下の前歯よりもかなり前方に出っ張っている状態で、前歯がうまく噛み合っていませんが、噛み合わせよりも寧ろ見た目を気にして治療される方が多いです。

上の前歯の先端と下の前歯の先端には僅かに隙間が空いています。この隙間をオーバージェットと呼びますが、オーバージェットが2~3mm程度ならば正常咬合で、4mm以上の場合に不正咬合の上顎前突、いわゆる出っ歯であると診断されることが多いです。

このように、正常な咬合でも上の前歯は下の前歯よりはわずかに前に出ているのですが、これを過度に気にされて、出っ歯ではないのに「自分は出っ歯だ」と思い込んでおられる方もおられます。

不正咬合をそのまま治療せずに放っておくと、健康の問題を引き起こすことがあるため、注意が必要です。

出っ歯の原因

出っ歯は遺伝によるものも多いのですが、先天的な理由ではなく、日常の生活習慣によって出っ歯になってしまう場合もあります。

後天的な出っ歯の原因としては、口呼吸、指しゃぶり、詰めやペンを噛む癖、舌で前歯の裏を押す癖などがあげられます。

舌を前に突き出す癖があると、開咬といって、上下の前歯が噛み合わずに開いてしまう状態になりますので、たかが些細な癖と思わず、治すようにしましょう。

また、遺伝の場合は顎の骨の大きさや歯自体の大きさも遺伝する傾向がありますので、親や祖父母に出っ歯の方がおられた場合は、遺伝する可能性があります。

まとめ

歯のキャラクター

出っ歯を放置すると、見た目のコンプレックスやドライマウス、奥歯の寿命短縮、滑舌の悪化、唾の飛散などの問題が生じる可能性があります。

出っ歯の原因には遺伝的要因や後天的な癖によるものがありますが、放置すると健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、早期の治療が必要です。

出っ歯を治療しないとどんな問題が起こるかについて、以下の2つの研究が参考になります。

1. 深い咬合の長期安定性と後戻りに関するシステマティックレビュー

深い咬合は最も一般的な不正咬合の一つであり、成功裏に治療するのが最も難しいものの一つです。長期的な深い咬合の修正の安定性が本当の課題となります。この研究の目的は、深い咬合修正の長期安定性を評価することでした。深い咬合の後戻り率は47.27%であり、ストレートワイヤー装置を使用した患者では67.74%、Ricketts生物学的進行型分割力学装置を使用した患者では30.38%の後戻り率が示されました。治療開始の年齢と治療技術は、深い咬合修正の長期安定性に影響を与える二つの要因であると結論付けられました【J. Diouf et al., 2019

2. 混合歯列期における過剰な咬合の修正のための改良された熱可塑性プレート

過剰な咬合は、後歯の外挿、歯(上顎/下顎)の内挿、またはこれらの組み合わせによって修正できます。この論文は、混合歯列期における過剰な咬合の修正のための改良された熱可塑性プレート(MTP)の製造を記述し、この装置を使用して治療された臨床例を紹介しています。MTPは、後歯の外挿を促進するだけでなく、過剰な咬合の治療において製造が容易で効果的な装置であることが示されました【M. Pithon et al., 2012

これらの研究結果から、出っ歯を治療しない場合、長期的な安定性に影響を及ぼし、特に深い咬合の後戻りのリスクが高まることが示唆されます。治療開始の適切な時期と効果的な治療技術の選択が、深い咬合修正の長期安定性に重要であることが強調されています。

この記事の監修者
医療法人真摯会 クローバー歯科・矯正歯科 あべの天王寺院
院長 永井 伸人

徳島大学 歯学部卒業卒業。日本口腔インプラント学会。日本顎咬合学会。

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クローバー歯科・矯正歯科あべの天王寺院

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