
クローバー歯科・矯正歯科 あべの天王寺院 歯科医師 永井 伸人
虫歯と知覚過敏はどう違うの?
歯がしみるとき、それが虫歯なのか知覚過敏なのか迷う方は少なくありません。結論から言うと、虫歯と知覚過敏は原因も症状も異なり、治療法も違います。 そのため、正しい見分けと早めの受診が大切です。
この記事はこんな方に向いています
- 歯がしみるけれど虫歯なのか分からない方
- 冷たいものや甘いもので歯が痛む方
- 知覚過敏と虫歯の違いを理解して適切に対応したい方
この記事を読むとわかること
- 虫歯と知覚過敏の違い
- それぞれの典型的な症状とセルフチェック方法
- 放置した場合のリスク
- 歯科医院での診断と治療の流れ
目次
虫歯と知覚過敏はどう違うの?
虫歯は歯垢に含まれる細菌が酸を出し、歯を溶かして進行する病気です。一方、知覚過敏は歯の象牙質が露出し、冷たい・熱いなどの刺激が神経に伝わって起こる症状です。原因や進行性、治療方法が異なるため、区別することが重要です。
虫歯=細菌による病気、知覚過敏=象牙質の露出による刺激反応。
虫歯は進行性の病気で、治療をしないと悪化します。知覚過敏は必ずしも病気ではなく、一時的な症状として現れることもあります。そのため、「放置しても自然に治るのか」「悪化するのか」 という点で両者は大きく異なります。
どんな症状なら虫歯の可能性が高いの?
虫歯は冷たいものや甘いものにしみるだけでなく、進行すると温かい食べ物や噛んだときにも痛みます。さらに、黒ずみや穴が見える場合は虫歯の可能性が高く、知覚過敏との違いを判断するポイントとなります。
虫歯は「しみる」だけでなく「痛みが続く・黒ずみがある」のが特徴。
虫歯が疑われる症状には以下の特徴があります。
- 冷たいもの・甘いものに加えて温かいものでしみる
- 噛むと痛みを感じる
- 痛みがしばらく続く
- 歯の表面が黒ずんでいる、穴がある
これらが当てはまる場合は虫歯の可能性が高く、早めの治療が必要です。
知覚過敏の典型的な症状は?
知覚過敏は、歯ぐきが下がったりエナメル質が削れたりして象牙質が露出したときに起こります。冷たい飲み物や歯磨きの際の刺激で一時的に「キーン」と鋭くしみるのが特徴で、持続的な痛みはありません。
知覚過敏は「一瞬のしみ」が特徴。
知覚過敏でよく見られるのは以下の症状です。
- 冷たい水や風で「キーン」としみる
- 歯磨きのときに痛む
- 甘いものや酸っぱいもので刺激が走る
- 痛みは数秒〜数十秒で消える
痛みが短時間で消える点が、虫歯との大きな違いです。
虫歯と知覚過敏をセルフチェックするポイントは?
歯がしみるときに「痛みが持続するかどうか」「黒ずみや穴があるか」を確認すると違いをある程度判断できます。ただし、セルフチェックには限界があるため、最終的には歯科医院での診断が欠かせません。
痛みの持続と歯の見た目でセルフチェックは可能だが、確定は歯科医院で。
セルフチェックの目安は以下のとおりです。
- 痛みの持続時間
- 数秒で消える → 知覚過敏の可能性
- 数分以上続く → 虫歯の可能性
- 見た目の変化
- 黒ずみや穴 → 虫歯の可能性
- 表面はきれい → 知覚過敏の可能性
- しみる条件
- 冷たい・酸っぱい・甘い → 知覚過敏でも虫歯でも起こり得る
- 温かいもので痛む → 虫歯の可能性が高い
このようにセルフチェックで違いを推測できますが、確実に判断することは難しいため、症状が続くときは必ず受診しましょう。
虫歯と知覚過敏の違いの比較
項目 | 虫歯 | 知覚過敏 |
---|---|---|
原因 | 歯垢の細菌が出す酸で歯が溶ける | 歯ぐきの後退やエナメル質の摩耗で象牙質が露出 |
痛みの特徴 | 冷たい・甘い・温かいものにしみる/痛みが持続する | 冷たい・酸っぱい刺激で「キーン」と一瞬だけしみる |
見た目の変化 | 黒ずみや穴が見えることが多い | 見た目の変化はほとんどない |
放置した場合 | 進行して神経まで達し、強い痛みや歯の喪失につながる | 痛みで歯磨きが不十分になり虫歯・歯周病のリスク増加 |
治療方法 | 詰め物・被せ物・根管治療など | 薬剤塗布・フッ素入り歯磨き粉・噛み合わせ調整など |
この表を見ると、虫歯は「進行性で放置すると悪化する病気」、知覚過敏は「刺激に敏感になる症状」という違いがはっきりわかります。セルフチェックでは痛みの持続時間や見た目に注目すると判断しやすいですが、確定診断は歯科医院で行う必要があります。
放置するとどうなる?それぞれのリスクは?
虫歯を放置すると神経まで進行し、強い痛みや歯の喪失につながります。知覚過敏は放置で歯ぐきの後退が進んだり、歯が欠けやすくなったりします。いずれも生活の質を下げるため、早めの対応が重要です。
放置は虫歯も知覚過敏も悪化リスク大。
虫歯のリスク
- 神経まで進行して激痛や根管治療が必要になる
- 歯を失う原因になる
- 他の歯や全身の健康にも影響
- 知覚過敏のリスク
- 歯磨きがしにくくなり虫歯や歯周病のリスクが増える
- 歯ぐきがさらに下がる
- 食生活に支障をきたす
虫歯も知覚過敏も軽視すると口腔内環境の悪化につながります。放置せず、早めの診断・治療が健康を守る鍵です。
歯科医院ではどう診断・治療するの?
歯科医院では、まず視診やレントゲン、冷温診などの検査を組み合わせて虫歯か知覚過敏かを判定します。虫歯であれば進行度に応じてフッ素塗布・詰め物・被せ物・根管治療などが行われ、知覚過敏なら薬剤塗布・フッ素入り歯磨き粉の使用・噛み合わせ調整・外科的処置などが選択されます。診断から治療まで体系的に進むため、自己判断せず受診することが安心につながります。
歯科医院では検査で原因を特定し、虫歯は削って補修、知覚過敏は薬やセルフケア指導で改善。
虫歯の治療
診断の流れ
歯科医院では以下の流れで診断を行います。
- 問診
いつから痛みがあるのか、どんな時にしみるのか、持続時間や強さを詳しく聞きます。 - 視診(目での確認)
歯の表面に黒ずみや穴があるか、歯ぐきの位置が下がっていないかを観察します。 - 触診・探針検査
専用の器具で歯を軽く触り、柔らかさや欠損の有無を調べます。 - 冷温診(知覚テスト)
冷たい風や液体を歯にあて、しみ方や持続時間を確認します。持続する場合は虫歯、短時間で消える場合は知覚過敏の可能性が高まります。 - レントゲン検査
見た目では分からない虫歯の進行や歯の神経の状態を確認します。
虫歯の治療方法
虫歯は進行段階に応じて治療が変わります。
- 初期(ごく浅い虫歯)
→ フッ素塗布や歯磨き指導で再石灰化を促す - 中等度(穴ができている)
→ 虫歯部分を削って詰め物で補修 - 重度(神経まで達している)
→ 根管治療を行い、被せ物で補強
知覚過敏の治療
知覚過敏の治療方法
知覚過敏は歯の状態に合わせて以下の方法を取ります。
- 薬剤塗布
→ 象牙細管を封鎖する薬を塗って刺激を遮断 - フッ素塗布・フッ素配合歯磨き粉の指導
→ 歯の再石灰化を促し、しみにくくする - 噛み合わせの調整
→ 食いしばりや歯ぎしりが原因の場合に行う - 外科的処置
→ 歯ぐきが大きく下がっている場合は歯肉移植術などで象牙質を覆う
診断のポイントまとめ
症状が似ていても、診断方法で原因を特定できます。
- 虫歯は放置すると進行するため治療が必須
- 知覚過敏は薬やセルフケアで改善できる場合もある
- どちらも「しみる」という共通点があるため自己判断は難しい
歯科医院での診断は、患者さんの症状を詳しく聞き、複数の検査を組み合わせて行います。虫歯か知覚過敏かの違いを見極めることが、適切な治療と早期改善につながります。
まとめ
症状があれば早めの受診が安心
虫歯と知覚過敏は原因も進行性も異なりますが、どちらも歯の健康に関わる大切なサインです。「一時的だから大丈夫」と思わず、症状があるときは歯科医院を受診することが最善の選択です。