矯正で顔の歪みを治せるのかどうかというのは気になりませんか。鏡を見て顔が左右非対称かもと感じた場合、原因の一つに、歯並びや噛み合わせの乱れが関係しているケースがあります。顔の歪みは見た目のみの問題ではなく、噛む筋肉や顎の動きに影響し、結果として体の不調につながる可能性もゼロではありません。歯列と顔のバランスが結びついているケースはあるため、この記事では、顔の歪みのセルフチェック、歪みが起こる理由、歯列矯正で改善が期待できるポイントをわかりやすく解説します。
目次
矯正と顔の歪みが関係すると言われる理由
矯正と顔の歪みのワードで検索する人が多いのは、歯並びや噛み合わせが見た目の左右差に影響しうるからです。顔は、上顎と下顎の骨格、歯列、顎関節、そして咬筋などの噛む筋肉のバランスで成り立っています。噛み合わせがズレていると、下顎がいつも同じ方向に誘導されやすくなり、口元の正中線がズレたり、輪郭の左右差が強調されることがあります。
顔は完全に左右対称ではない
大前提として覚えておきたいところですが、人の顔はもともと完全な左右対称ではありません。写真の角度や表情、噛み癖、姿勢によっても見え方は変わります。そのため歪みはすべて矯正で治ると考えるのは大変危険です。歯列矯正により改善ができるのは主に歯と噛み合わせの調整で、骨格の左右差が大きい重度の骨格は問題となるケースでは矯正単独で限界となることもあります。その場合は、外科矯正となるセットバック治療（当グループではカトレア院で治療）なども検討することになります。
顔の歪みの主な原因
顔の歪みは歯並びのみの問題ではなく、複数の要因が重なって起きることが多いです。代表的な要因を、矯正と関係の深い順にまとめます。
| 要因 | 具体例 | 起こりやすい影響 |
|---|---|---|
| 噛み合わせの左右差 | 片側のみ当たりが強い／奥歯の噛み方が左右で違う／前歯がズレて噛む交叉咬合、早期接触など | 下顎が噛みやすい位置に偏りやすく、筋肉バランスが変化して顎のずれにつながる可能性あり |
| 片側噛み、歯ぎしり | 偏咀嚼／食いしばり／歯ぎしり | 筋肉の発達が左右差となりエラの張りや口角の高さの印象差になる。顎関節症や咬筋肥大のリスクもあり |
| 顎関節の不調 | 顎関節症の進行／顎の動きの制限 | 顎骨の変化や動きの制限が起こり、顔面非対称や顎のラインの左右差への可能性あり |
| 日常の癖や姿勢 | 頬杖／うつ伏せ寝／舌癖／指しゃぶり／口呼吸／爪噛み／唇を噛む | 顎や歯列への負担が偏ると特定の歯に継続的な負担がかかり噛み合わせの偏りにつながることが多い |
ここで大事なのは、原因は一つと決め打ちできません。自己判断でトレーニングやマッサージを続けるより、矯正歯科で噛み合わせと顎の動きまで確認してもらうのがベストとなります。
矯正で改善が期待できるケースと難しいケース
矯正で顔の歪みが結局どこまで変わるのかが気になるところでしょう。改善が期待できるケース、反対に難しいケースで目安を挙げていきます。
改善が期待できることが多いケース
矯正単独で改善が期待できるケースを挙げます。
- 歯並びの乱れが左右差を作っていて、口元の中心の正中線がズレて見える
- 噛み合わせのズレで下顎が横に誘導されている機能的偏位である
- 奥歯の噛み方の左右差があり、咬合の再構成をすればバランスが取りやすい
このような場合は、歯列矯正によって口元の左右対称性の回復、噛み合わせ改善による顎の位置の修正、上下の歯列バランスの改善などが期待できます。
機能的偏位と骨格的偏位の違い
機能的偏位と骨格的偏位の違いをご紹介します。
- 噛んだ時のみズレるのであれば機能的偏位
- 骨の構造や左右の下顎枝の長さの違いがあり常にズレるのであれば骨格的偏位
難しいケース
矯正単独では限界が出やすいケースを挙げます。
- 下顎骨や上顎骨そのものの左右差が大きい骨格性の非対称
- 咬合平面の傾きや顎の偏位が強く、見た目と機能の両面で大きな課題がある
- セットバック治療など外科的矯正を含めないと、目標に届きにくい
顔の歪みの原因が歯列や噛み合わせであれば歯列矯正で効果が出やすいですが、歯因性ではなく骨格性の問題が大きい場合、どうしても外科的に処置しなければなりません。
矯正中に顔が歪んだ気がすると感じる理由
矯正の相談で意外と多いのが、始めてから歪みが気になる、顔が変になった気がするという不安です。多くは悪化ではなく、次のような要因でそう感じることがあります。
| 感じる理由 | 説明 |
|---|---|
| 噛み合わせが動いている途中 | 矯正の途中は上下の当たり方が変わり、一時的に片側が当たりやすくなって顎の位置が不安定に感じることがある |
| 筋肉が慣れていない | これまでの噛み癖でできた筋肉バランスが、新しい噛み合わせに馴染むまで時間がかかる |
| 見た目の焦点が変わる | 前歯が整うと口元に目がいきやすく口角や輪郭の左右差が目立ったように感じることがある |
痛みが強い、顎がカクカクする、口が開きにくいなどの症状が出てきた場合は、我慢せず担当医に早めに共有してください。顎関節症を引き起こしてしまうと、顔の歪みのみでなく生活の不便も生じてしまいます。
治療前の重要なポイント
矯正で顔の歪みを改善したいならば、装置の種類をワイヤーかマウスピースかと悩むより先に、診断の精度が重要です。最低限ここは押さえておきたいポイントをまとめます。
顔の正中線と歯列の中心線のズレ
下顎の偏位が骨格的偏位か機能的偏位か
咬合平面の傾きと奥歯の左右差がどうか
顎関節を動かした際に痛み、雑音、開口できるか
成長期か、成長終了後か
成長期の骨格性下顎前突では、顎骨の成長量や方向を正確に予想するのが難しいことがあります。どの装置が安いかという点で選ぶと、顔の歪みの悩みが置き去りになることがあります。歪みが歯列、噛み合わせ、顎関節、骨格などどこ由来なのか、検査でしっかりと診断してもらうのが最優先です。
自分でできるチェック方法と受診の目安
セルフチェックとしては、鏡で正面から目の高さ、鼻、口角、笑ったときの口元の左右差、顎のラインなどを見る方法が紹介されています。ただし、自宅でのチェックは気づきのために役立てて、結論を出すものではないと覚えておきましょう。
おすすめのやり方
では、顔の歪みがどのような具合か確認する方法をご説明します。
- 鏡の前で正面を向き、目、鼻、口角の高さを確認
- 歯を見せて笑って、上の歯の見え方や口角の上がり方を観察
- 照明と角度を揃え、スマホで正面写真を撮り左右反転して見比べる
受診の目安
顔の歪みはあるけれど、歯科医院へ受診した方が良いのかどうかという受診の目安を挙げてみます。
- 片側だけで噛む癖が強い、噛みにくい側がある
- 顎が痛く開ける時に音がして開けにくい
- 歯の正中ズレが大きくなってきた気がする
- 写真で輪郭の左右差が強まっている
セルフチェックはあくまで目安ですので、思い当たる節があれば、歯科医師の診断を受けましょう。
まとめ
矯正と顔の歪みの関係性として、噛み合わせや歯列の左右差が、口元、顎の位置、筋肉バランスに影響し、見た目の歪みとして現れることがあります。その一方で、顔の歪みには生活習慣や顎関節、骨格の左右差など複数要因が絡むため、矯正のみで必ず解決するとは限りません。満足度の高い治療のためには、歪みの原因が歯列、噛み合わせ、顎関節、骨格のどれか、矯正単独で治療する限界についても説明を受け、途中経過の見え方の変化に一喜一憂せず、痛みや開口障害などの症状が出たら早めに相談することです。不安があるなら、カウンセリング時に顔の左右差が主訴であることをはっきり伝え、写真、咬合、顎関節まで含めた診断を依頼するところから始めてみてください。
