審美歯科

前歯をセラミックにしても後悔しないためには?

前歯をセラミックにしても後悔しないためには?

前歯をセラミックにしてから後悔しても、再治療には時間や費用がかかり、心身ともに負担となります。前歯をセラミックにするメリットやデメリット、どうすれば後悔しないのかという点をご紹介いたします。

前歯をセラミックにする治療法

周りの人から見て口元は目にとまりやすく、お口の印象は前歯の雰囲気によって左右されやすいです。そのため、笑った際に見える上顎(じょうがく)の前歯のみを白く美しい歯の色、形、歯並びに変更したいというご希望の方はおられます。歯の色を白のみにするためには審美歯科で行っているホワイトニングを行えば可能ですが、前歯の大きさやねじれや色をまとめて短期間で治療したい場合、矯正治療ではなくセラミック治療が適切です。

セラミック治療の流れを簡単に説明

虫歯や歯周病感染の無い清潔な口腔内であれば、お悩みのある前歯を全方位削って土台にして、セラミックの被せ物(クラウン)を被せて整える治療を行います。

  1. 前歯のエナメル質を削る
  2. 痛みが出ないか確認を行う
  3. 人工歯の被せ物を作製する
  4. 被せて歯の見た目を美しくする

歯の透明感や光沢などは、材料を選べば天然歯と遜色なく作製することが可能です。患者さんの周りの歯の色に合わせたり、歯の大きさが変えられるというのがセラミック治療の特徴です。

セラミック治療で後悔しないために知るべきこと

セラミック治療で後悔しやすいのは下記のようなことが起きた時です。

  • セラミック歯が理想と違う
  • セラミック歯が欠けてしまった
  • 治療前より噛み合わせが悪くなった
  • セラミックの歯なのに虫歯になった
  • 歯髄炎で治療の必要がある

セラミック歯が理想と違う

  • 周りの歯と色が合わずに前歯2本のみ浮いた色調になり目立つ
  • 歯の形が希望と違う

セラミックの人工歯の色は、患者さんの天然歯と大きさや色が馴染むように作製するのが基本です。ただし、歯科治療でどうなりたいかを患者さんと医師できちんと相談できていなかったり、歯科医師の経験が不足していると合わないセラミック歯を入れてしまうというトラブルにつながります。

セラミック歯が欠けてしまった

セラミックは強度のある材料ですが、急にかかる強い力に弱く、割れたり欠けることがあります。前歯は食べ物をちぎる役割があるため、噛み合わせの調整をきちんとせずにセラミックの歯にすると、セラミックが欠けたり、ひびが入ることがあります。

治療前より噛み合わせが悪くなった

見た目の歯並びの美しさを優先しすぎて、噛み合わせを診断していないと、患者さんにとって良い治療とは言えません。歯本来の機能である噛み合わせを確認したうえで、審美性を高めてくれる歯医者さんへの通院をおすすめします。

噛み合わせが悪い状態のままでは、対合歯の接触がないと伸びて更に咬み合わせが悪くなり、顎関節に負担をかけます。結果的に顎関節症になってしまうリスクが上がります。

セラミックの歯なのに虫歯になった

セラミックを被せる前の段階で虫歯や歯周病にかかっているのに治療せず、セラミックを被せた場合に起こります。土台の歯の対処をきちんとせずにセラミックを被せると、虫歯菌はクラウンの下で進行し、強い口臭や膿などが出る重度の虫歯になります。神経(歯髄)まで進行した虫歯は失活歯となり、治療のためにセラミックを外して土台の歯を削り歯髄を抜いて根管治療しなければなりません。土台の形が変わると、セラミックの歯も再作製になるため、更に費用や治療期間がかかります。

歯髄炎で治療の必要がある

飲食を行った時に冷たいものがしみたり、噛むと痛みが起きる場合、歯髄炎が疑われます。歯を削る強い刺激が歯髄に伝達し、それにより歯髄炎を起こしてしまいます。歯髄炎となり、失活歯(神経が死んだ)状態の場合は、歯髄を取り除く抜髄という処置を行う必要があります。

前歯のセラミックを後悔しないためには

前歯のセラミックで後悔しないためには、メリットだけではなくデメリットをしっかりと知っておくことです。大前提として、セラミック治療のメリットは、見た目の美しさを短い期間で手に入れられること、デメリットは健康な歯を削らなければならないことです。では、これより、セラミックの種類によってのメリット、デメリットを挙げていきます。

オールセラミック

ガラス系セラミック100%の材料の人工歯

メリット

  • 前歯に被せても光の透過度があり、天然歯と変わらない
  • 強度があり、着色汚れが付かない

デメリット

  • 急に強い力がかかるとひびが入ることがある
  • ジルコニアセラミックと比べると強度は劣る

ジルコニアセラミック

二酸化ジルコニウムが材料の人工歯

メリット

  • 人工ダイヤモンドと呼ばれる強度があるため、奥歯に入れても咬合が可能である

デメリット

  • 光の透過度はオールセラミックより劣るため、前歯に使用すると人工歯とわかる

ハイブリッドセラミック

セラミックと歯科用プラスチックを混ぜた材料で作製された人工歯

メリット

  • プラスチックが混じった素材であるため、他の素材に比べて安く入れることが出来る

デメリット

  • 歯科用プラスチックが混じる材料のため、吸水性があり臭いがつきやすく、着色のリスクがある

まとめ

白く美しい歯を入れても、周囲の色と合わなかったり、噛む際に負担になると、心身ともによくありません。治療前にセラミックに関する情報をしっかりと確認し、審美歯科を標榜している歯科医院へ相談しましょう。セラミックの症例が豊富な実績のある歯科医師のもとで行うのが望ましいです。

前歯をセラミックにする際に後悔しない方法に関して、以下の研究が参考になります。

1. セラミック修復の患者満足度

セラミック修復材料の選択において、患者の満足度は歯科治療の品質の重要な指標です。レーザーガラスベニア(IPS Empress)、EX3フェルドスパスセラミックベニア、光硬化コンポジットレジン直接修復(EsthetX)を受けた患者グループにおいて、口腔健康が生活の質に与える影響(OHIP-49)の改善が見られました。特に、心理的状態の改善が最も顕著であったことが示されました。この研究は、セラミック修復を考える際に、患者の生活の質の向上、特に心理的側面を最大限に改善するために、全セラミックレーザーガラスやフェルドスパスセラミックの修復を推奨しています【Y. Vodoriz, I. Tkachenko, N. M. Brailko, I. V. Skubiy, & A. N. Skubiy, 2021

2. 全セラミック修復による軽度の前歯の咬合異常の修正

成人の軽度の前歯の咬合異常に対する全セラミック修復技術の適用とその臨床的美的効果を探求した研究です。脱臼した前歯の密集、悪い咬合、または歯の変色による軽度の誤咬合の62例の患者を対象に、実験グループ(全セラミック修復による治療)と対照グループ(ニッケルクロム合金PFMクラウン修復による治療)に分けて比較しました。結果として、治療後の患者の主観的満足度スコア(視覚アナログスケール、VAS)が大きく向上したことが示されました【Qiu Wei-jian, 2014

これらの研究から、セラミック修復を行う際には、患者の生活の質に与える影響を考慮し、特に心理的側面の改善を目指すことが重要であることが分かります。また、適切なセラミック材料の選択と正確な治療計画により、軽度の咬合異常の修正や美的な要求に応えることが可能です。

この記事の監修者
医療法人真摯会 クローバー歯科・矯正歯科 あべの天王寺院
院長 永井 伸人

徳島大学 歯学部卒業卒業。日本口腔インプラント学会。日本顎咬合学会。

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クローバー歯科・矯正歯科あべの天王寺院

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック