監修:院長 永井 伸人(オールオン4・サイナスリフト・インプラント難症例担当)

「歯科治療の沼」 ― なぜ治しても治しても終わらないのか

悪くなったところを、その都度なおしていく。一見あたりまえのこの治療が、実は多くの人を、抜け出せない迷路へ引き込んでいくことがあります。私はこれを「歯科治療の沼」と呼んでいます。なぜ正しいはずの治療が落とし穴になるのか、その仕組みをお話しします。

「歯科治療の沼」とは

「歯科治療の沼」とは、ひとことで言えば、悪くなったところをその都度部分的に治し、それを延々と繰り返してしまう状態です。厄介なのは、その一回一回の治療は、決して間違って見えないこと。痛む歯を治すのは正しい、抜けたところを補うのも正しい。だからこそ、患者さんも治療する側も、沼にはまっていることに気づきにくいのです。

なぜ、正しいはずの治療が落とし穴になるのか

口の中は、すべての歯が支え合った、絶妙なバランスの上に成り立っています。一本の歯を治療することは、そのバランスを変える一手になります。一本を治すたびに均衡が少しずつ変わり、そのしわ寄せが別の歯にかかって、今度はそこが悪くなる。それをまた治すと、さらにバランスが変わり、次の問題が生まれる――。部分的な治療は、問題を解決しているようでいて、次の問題の種をまいていることがあるのです。

沼に、はまっていく道のり

はじまりは、たいてい奥歯です。奥歯が痛む、治療する、あるいは抜いて補う。しばらくすると、奥歯を失った負担が別の歯にかかり、今度はそこが痛み出す。部分入れ歯を作れば、支えにする歯に金具がかかり、その歯が少しずつ傷んでいく。入れ歯が合わなくなり、調整に通う。治しても治す端から次が壊れていく――。「気づけば週に一度は歯医者に通っていた」という方も少なくありません。

沼の、本当の代償

沼の恐ろしさは、その代償にあります。失われるのは歯だけでなく、膨大な時間とお金です。たとえば、部分的な治療を繰り返すうちに、合計で数百万円、年数にして三年・四年が、いつのまにか費やされている――ということが現実に起こり得ます(※あくまで一例で、状況により大きく異なります)。しかもその間ずっと、どこかの歯がない不自由と、いつ終わるとも知れない不安を抱え続けることになります。

沼から、抜け出す道

では、なぜ抜け出せないのか。答えは、全体を見渡した計画がないまま、目の前の一本だけを追いかけているからです。裏を返せば、抜け出す道はここにあります。目先の一本ではなく、口全体と、5年後・10年後・20年後の未来までを見渡したうえで、最善の計画を立てること。私が「時系列診断」と呼ぶ考え方です。同じお金と時間を使っても、地図を持って進むかどうかで、結果は大きく変わります。

「自分は沼にはまっているかもしれない」と感じたら、まずは現状を全体から見立てることが第一歩です。セカンドオピニオンだけのご相談でも構いません。

諦める前に、一度ご相談ください。

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よくあるご質問

1本ずつインプラントを入れるのと、オールオン4は何が違うのですか?

失った歯の本数だけインプラントを入れる方法と、最小4本で全体を支えるオールオン4とでは、適している状況が異なります。残っている歯が少なく、多くの歯を補う必要がある場合、1本ずつ入れるとインプラントの本数が多くなり、費用も身体への負担も大きくなりがちです。オールオン4は、少ない本数で全体を支えるため、こうした負担を抑えられます。一方、失った歯が少なく、健康な歯が多く残っている場合は、部分的なインプラントのほうが適しています。

これまで何度も歯の治療がうまくいきませんでした。それでも相談していいのでしょうか?

もちろんです。これまでの治療がうまくいかなかった経験をお持ちの方こそ、ぜひ一度ご相談ください。うまくいかなかった背景には、お一人おひとり異なる事情があります。これまでの経緯やお気持ちをお聞きしたうえで、現在の状態を診断し、これからどうしていけるかを一緒に考えます。過去のことでご自身を責める必要はありません。まずはお話を聞かせてください。

これまで歯の治療に、たくさんのお金をかけてきました。それでも、やり直す価値はありますか?

これまで治療に費用をかけてきた方が、思うような結果に至らず、悩まれることは少なくありません。過去にかけた費用を惜しむお気持ちは自然なことですが、大切なのは、これから先の人生を、どれだけ快適に過ごせるかです。現在の状態を正しく診断し、これからにとって最善の方法を選ぶことが、結果的に時間や費用のむだを減らすことにつながる場合もあります。まずは、現状とご希望を、あらためてお聞かせください。

結局、自分にはどの治療がいちばん向いているのか分かりません。

どの治療が向いているかは、お口や骨の状態、ご希望、生活スタイル、ご予算など、さまざまな要素で変わります。ご自分だけで判断するのは難しいのが当然です。だからこそ、専門家による診断と、丁寧な説明が欠かせません。複数の選択肢と、それぞれの利点・負担を正しく知ったうえで、納得して選ぶことが大切です。迷っている状態のまま、一度ご相談ください。情報を整理するお手伝いから始めます。