歯と口のトラブル

歯石が勝手に取れた?見落としがちなサインとその意味

日頃、歯みがきなどのお口のケアをしていると、いつの間にか歯石が勝手に取れていたという経験をした方もいるかもしれません。しかし、歯石は歯に強くこびりついており、通常のブラッシングではほとんど除去できないものです。そのため、もし歯石が自然に外れたように感じた場合、歯の周りで何らかの問題が起きているサインである可能性があります。今回は、歯石が勝手に取れたと感じる原因や、歯石をそのままにしておくことで生じるリスクについて詳しく解説していきます。

歯石とは何か?

歯石とは、もともと柔らかい歯垢(プラーク)が、唾液中のカルシウムやリン酸などのミネラル分により石のように硬く固まったものです。歯垢は本来、歯みがきで落とせるものですが、一度石灰化して歯石になると、通常のブラッシングでは除去できません。

歯石の分類

歯石は、歯と歯茎の境目や歯と歯の間、歯周ポケットの中などにできやすく、種類としては歯肉縁上歯石(しにくえんじょうしせき)と歯肉縁下歯石(しにくえんかしせき)に分けられます。歯肉縁上歯石は、歯ぐきより上に付着していて浅い部分にありますが、反対に、深い歯周ポケットの奥に入り込んだ歯肉縁下歯石は、歯茎の下の歯周ポケット内に隠れている部分です。特に後者は色が黒っぽく、気づきにくいことがあります。

勝手に取れたのは本当に自然なこと?

結論から言うと、歯石が自然に取れるのは非常にまれです。なぜなら、歯石は石のように硬く歯に強固に付着しており、スケーラーや超音波スケーラーなど専門の器具で除去するのが通常だからです。それでも歯石が勝手に取れたように感じる、口の中から固いものが出てきたと感じるケースがありますが、それは自然脱落ではなく、別の要因で歯石の一部が外れた可能性が高いのです。

なぜ歯石が自然に取れることがあるのか?

歯石が勝手に取れたように見える背景には、主にこのような理由があります。

歯石が過剰に蓄積していた

歯石はその表面がザラザラしており、さらにそこに汚れが引っかかりやすい構造です。時間とともにプラークが石灰化し、さらに歯石が厚みを増すというサイクルを繰り返すことで、非常に大きく、重くなってしまうことがあります。その結果、歯にしっかり付いていられず、一部が欠けるように外れてしまうことがあります。

ブラッシング、フロス、食べ物などの刺激

強めの歯みがきやデンタルフロス、あるいは固い食べ物を噛んだ時の衝撃などで、歯石の角や端が欠けて取れることがあります。ただし、これも歯石がきれいに除去されたのではなく、あくまで一部が剥がれたに過ぎない可能性があります。

歯周病などで歯周組織が弱ってきた

歯を支えている骨や歯茎の状態が悪くなり、歯がぐらついたり、歯周ポケットが深くなることで、そこに付着していた歯石が自然に脱落することがあります。

これらの理由から、一部の歯石が勝手に取れたと感じられることはあっても、全部の歯石が除去できたわけではなく、歯の健康的な状態への戻りを意味するわけではありません。むしろ、口腔内のトラブルが進行しているサインかもしれません。

歯石が取れたと感じたとき、まず気をつけるべきこと

歯石が勝手に取れたと感じたら、次のポイントに注意すべきです。

取れたものが歯石か、歯のかけらや詰め物か
これは判断が難しいため、自己判断せずにまず歯科受診を検討しましょう。 もし歯の破片や詰め物だった場合、放置すると虫歯や歯の損傷につながる可能性もあります。

歯石が取れたから問題なしなのか
むしろ歯石がたまりすぎていた、あるいは歯周病が進行していた可能性として捉えることが大切です。国家資格を持つ歯科衛生士による歯石除去(スケーリング)を含めたクリーニングを受けることをおすすめします。

歯石の色にも注意

突然取れた歯石が黒く、さらに嫌なニオイを感じる場合は、歯周病が進行している可能性が高い状態です。このようなケースでは、必ず歯科医院で専門的な治療を受ける必要があります。

歯石は付着して間もない頃は白っぽい色をしていますが、歯周病によって歯周ポケットが深くなると、その内部にできる歯石は黒ずんだり強いニオイを発したりすることがあります。もし歯周病を患っている場合、セルフケアのみで症状を改善するのはほぼ困難です。歯科医院で徹底的に歯石を取り除くことが欠かせません。また、仮に歯石が自然に取れたように見えても、それはほんの一部が外れただけであり、お口全体を清潔に保つには、治療としての歯石除去を受ける必要があります。

歯石を放置するとどうなるか?

歯石をそのままにしておくことは、お口の中にさまざまな悪影響を与える可能性があります。

歯周病や口臭が悪化する

歯石が付着すると歯がデコボコし、細菌が更に歯に付着しやすく、虫歯や歯周病の原因となります。歯周病が進行すると、歯を支えている歯槽骨が溶け、最悪の場合、歯がぐらつき抜けてしまうことも考えられます。歯石や歯垢は口臭の原因ともなりやすく、口腔内が不衛生な状態になりやすいです。

体全体に歯周病菌が回る

また、口腔内の炎症や歯周病が慢性的になると、体全体の健康へも悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。したがって、たまたま歯石が取れたからといって安心せず、むしろ危機感を持つべき状況と考えたほうが良いでしょう。

歯石をためないために予防と対策

歯石やその悪影響を防ぐためには、このような習慣や対策が効果的です。

毎日の丁寧なブラッシング

プラークをためないように、歯磨きをしっかり行いましょう。歯石になると、歯科医院で行うクリーニングでないと落ちません。歯垢の段階で落とすことが理想です。

デンタルフロスや歯間ブラシの併用

歯と歯の間や歯と歯茎の境目は食べかすや歯垢が溜まりやすく磨き残しやすい部位です。デンタルフロス、タフトブラシなどの補助道具を活用して行いましょう。毎日のブラッシングを丁寧に続けることで歯ぐきが引き締まり、歯周ポケットが浅くなると、内部に隠れていた歯石が表に見えてくることがあります。

定期的な歯科検診とプロによるクリーニング

歯石は硬くセルフケアでは落とせないことが多いです。歯石を落とそうと自身で力を入れてしまうと、歯にダメージを与えてしまいます。歯科でのスケーリングや定期的なクリーニングを受けるのが安全です。根本的に歯石をきれいに除去するためには、歯科医院での施術が確実です。

歯石が付きやすい部位の意識

特に歯周ポケット、歯と歯の間、歯茎と歯の境目など、歯石ができやすい部分を意識的にケアしましょう。

歯石除去後に今までと感覚が違うと感じる

プロによるクリーニングにより歯石を除去した後、今までと感覚が違うと感じることがあります。

理由 状態 患者さんが感じること ポイント
健康的な歯茎になってきた 歯と歯の間に付着した歯石が取り除かれ、炎症で腫れた歯茎が引き締まり始める 歯と歯の間が広くなったように感じる。スッキリした感覚が強い 良い方向に回復している。時間とともに馴染む
元の歯の状態に慣れるまで時間が必要 長期間歯石が隙間を埋めており、その状態に口の中が慣れてしまっている 舌触りが変わる。歯の間に違和感を覚える 違和感は自然な反応であり、健康な状態に戻った証拠

まとめ

歯石が勝手に取れたと感じることがあっても、それはむしろ 歯石が過剰にたまり、異常が進んでいたサインである可能性が高いです。歯石は本来、専門器具でなければ除去できず、セルフケアや偶然の刺激で少し取れたり欠けたりすることがあっても、きれいさっぱり落ちるわけではありません。取れたから歯がきれいになったと感じても、残っている歯石やプラークが口腔内に悪影響を及ぼし続ける可能性があります。だからこそ、取れたものが何かをまず確認し、可能であれば 歯科医院での診断やクリーニングを受けることをおすすめします。

大切なのは、日々の丁寧なブラッシングと定期検診です。歯石はできてから取り除くのではなく、そもそもできないように予防することこそが健康な歯や歯茎を守る第一歩です。

この記事の監修者
医療法人真摯会 クローバー歯科・矯正歯科 あべの天王寺院
院長 永井 伸人

徳島大学 歯学部卒業卒業。日本口腔インプラント学会。日本顎咬合学会。

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クローバー歯科・矯正歯科あべの天王寺院

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック