歯と口の基礎知識

歯磨きはいつ、何回するのが良いの?

歯磨きはいつ、何回するのが良いの?

クローバー歯科・矯正歯科 あべの天王寺院 歯科医師 永井 伸人

歯磨きは毎食後にするのが理想的ですが、外出先で歯磨きするのはなかなか難しいものです。食後の口の中はどのような状態になっているのか、歯磨きはいつすればいいのか、何回すればいいのか、出来ない時はどうするのかについてご説明します。

歯磨きのタイミングや回数は?

歯磨きのタイミングについては、諸説あるのが現状です。そのため、絶対に省いてはいけないタイミングをご紹介します。

虫歯や歯周病を予防するための歯みがきは、1日に最低2回行いましょう。全く歯磨きをしない日があったり、1日に1回しか磨かない場合は、虫歯や歯周病になりやすくなります。

1日のうちで歯磨きをした方が良いというタイミングは、朝と夜の2回です。朝は夜間の唾液の減少によってお口の中に細菌が多い時間帯といえます。また、夜間はお口の中の細菌が活発に活動することから、寝る前の歯みがきで細菌の数を減らすことをおすすめします。

食後のお口の中は酸性になる

私たちの口の中は通常は中性ですが、食事の後は一時的に酸性になります。酸性とアルカリ性のどちらに傾いているかを数値で表したのがpHと呼ばれる数値です。

私たちの口の中が食事と時間によってどのように変化するのかを表したものは「ステファンカーブ」と呼ばれます。

普段は口の中のpHは7程度の中性に保たれていますが、食後は酸性に傾いて、グラフでは下に移動しています。

pH5.5になるとエナメル質が溶け出す脱灰が始まる

お口の中のpHがpHが5.5になり、酸性の傾向が強まると、歯の表面のエナメル質が溶け出す脱灰が始まります。

食事の間隔だけでなく、間食もだらだら食べずに時間をきちんと決めて食べることで、食事と食事の間隔をしっかり開けるようにすると、唾液が口の中を酸性から中性に戻してエナメル質を修復する再石灰化を行ってくれます。

間食やジュースを飲むなど頻繁にお口に何かを入れていると、歯は常に酸にさらされてエナメル質が溶けやすい状態になります。そのような状態では再石灰化が間に合わず、虫歯になってしまいます。

再石灰化を起こさせて虫歯を防ぐには?

  • 甘いものやスナック菓子などをだらだら食べず時間を決めて食べる
  • 炭酸飲料やジュースなど酸性の強いものはできるだけ控える
  • 食後すぐにフッ化物配合の歯磨き剤で歯を磨く
  • 食後すぐに歯磨きが出来ないなら、お水ですすぐか、ノンシュガーのガムを噛む
  • 日頃からしっかりと唾液を出すようにする

歯磨きやガムなどのタイミング

歯磨きの後、ガムを噛むと虫歯予防に効果的です。虫歯予防に最適な歯磨きやガムを噛むタイミングは以下の通りです。

虫歯からしっかりと歯を守る:食後すぐにフッ化物配合の歯磨き剤で歯磨きし、ノンシュガーのガムを20分間噛む

虫歯から歯を守る:食後すぐにフッ化物配合の歯磨き剤で歯磨きし、ノンシュガーのガムを10分間噛む

虫歯になりにくい:食後すぐにフッ化物配合の歯磨き剤で歯磨きするか、またはノンシュガーのガムを噛む

やや虫歯になりやすい:食後30分後にフッ化物配合の歯磨き剤で歯磨きするか、もしくはお茶などで口をすすぐ

虫歯になりやすい:歯磨きをしない

忙しい方はできることだけでもOKですが、全く何もしないと虫歯になりやすいので食後の歯みがきは大切です。

歯ブラシ

歯磨きはいつ、何回するに関するQ&A

「ステファンカーブ」とは何ですか?

「ステファンカーブ」とは、食事の後の口腔内のpHの変化を表したグラフのことです。通常、口腔内のpHは7程度の中性に保たれていますが、食事の摂取により一時的に酸性に傾きます。この変化を示すグラフでは、食事の摂取後にpHが下がり、時間とともに再び中性に戻っていく様子が示されます。

忙しい場合、どのような虫歯予防対策が推奨されますか?

忙しい場合でもできる限りの虫歯予防対策として以下の点を守ることが重要です。
・食後すぐにフッ化物配合の歯磨き剤で歯磨きするか、ノンシュガーのガムを噛む。
・30分以内に食後の歯磨きを行うか、口をお茶などですすぐ。
・食事や間食の時間を決めて規則正しく行う。
・炭酸飲料やジュースなどの酸性飲料は控える。
忙しい状況でもこれらの予防対策を心掛けることで、虫歯のリスクを低減することができます。

歯磨きの後にガムを噛むと虫歯予防に効果的な理由は何ですか?

歯磨きの後にガムを噛むことで虫歯予防に効果的な理由は、ガムが唾液の分泌を促進し、口腔内のpHを中性に戻すためです。唾液には再石灰化を促進する成分が含まれており、口腔内の酸性を中和して歯のエナメル質を修復する助けとなります。

まとめ

歯のキャラクター

食後、私たちの口の中は酸性になり、歯のエナメル質が溶けやすい状態になります。唾液の再石灰化により、歯から溶け出したカルシウムイオンやリン酸イオンは、歯に再度取り込まれてエナメル質の修復が行われますが、頻繁に間食をしていると、再石灰化が追い付かず、歯はどんどん溶け続けます。

それを防ぐためには、食事や間食の時間を決めて、食事と食事の間隔をあけて、しっかりと再石灰化するための時間をとることが必要です。歯磨きやガムを噛むなどで虫歯予防を効果的に行っていきましょう。

歯磨きの最適なタイミングと頻度に関する研究から、以下の情報を提供します。

1. 成人では、歯を「少なくとも1日2回」磨くことが推奨されています。実際のところ、79.6%の参加者が1日2回歯を磨いており、平均磨き時間は約1分36秒でした。また、磨き方には個人差があり、正しい磨き方を理解している人は少数でした。これらの結果は、歯磨きの頻度と方法に関するさらなる教育の必要性を示しています。【Ganss, Schlueter, Preiss, & Klimek, 2009

2. また、機械的に換気される成人患者において、歯磨きの最適な頻度を調査するランダム化比較試験では、歯磨きの頻度が増えると歯垢や炎症のリスクが低減することが示唆されています。この研究では、1日に1回、2回、または3回歯を磨くグループにランダムに割り振られ、歯垢の量、歯肉溝液中のIL-1βのレベル、および感染症のリスクについて評価されました。【Munro, Liang, Cairns, Hamilton, Chen, & Kip, 2018

要約すると、成人においては1日に少なくとも2回、平均約1分半から2分の歯磨きが推奨されています。歯磨きの頻度や方法を改善するためには、正しい技術と習慣の普及が必要です。

この記事の監修者
医療法人真摯会 クローバー歯科・矯正歯科 あべの天王寺院
院長 永井 伸人

徳島大学 歯学部卒業卒業。日本口腔インプラント学会。日本顎咬合学会。

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